エントリーシート(ES)の中で、最も重要であり、
かつ就活生が頭を悩ませるのは『志望動機』ではないでしょうか。
書き方例やテンプレートを見ながら書いても、
「どこにでもあるような、誰の志望動機なのかわからない文章になってしまう…」
というお悩みをよく聞きます。
そこで今回は、「これぞ自分の志望動機!」と思える、
人事担当者をうなずかせる志望動機の書き方のポイントをご紹介します。
最後に書き方例も記載していますので、ぜひ参考にしてください。
説得力のない志望動機の特徴
ポイントをお伝えする前に、説得力のない志望動機のよくある例を2つご紹介します。
ご自身の志望動機がどれかに当てはまっていないか、チェックしてみてください。
企業ホームページから文章をそのまま借りてくる『それで?な文』
企業研究の方法として、企業のホームページを読み込む、
特に企業理念やビジョンのページに注目して理解しようとすることはとてもいいことです。
しかし、よく理解せずに、理念やビジョンの言葉をそのまま志望動機に書いているだけのケースがあります。
例えば、
「『挑戦と創造でイノベーションを起こす』という貴社のビジョンに大変共感しましたので志望します」
これを読んだ人事担当者はもれなく
「それで?」「なぜ共感したのか、その続きが聞きたいのだけど…」と思ってしまうでしょう。
また、
「貴社の〇〇という新規事業や顧客に対する△△な対応、
SDGsに対する~~な取り組みが大変魅力に感じました」と
企業の取り組みについてあれこれと賞賛している志望動機もよく見かけます。
この志望動機も人事担当者にとっては、やはり
「褒めてくれてありがとう。それで?」という反応になってしまいそうです。
「なぜそう思うのか」が書かれていない『淡々文』
自分がやってきたことや志望に至る経緯を淡々と書き連ねている志望動機は、読み手からすると、
「状況はよくわかったけど、この学生がどういう人か、人柄がわかならい」
という印象を持たれます。
例えばこのような文章です。
この文章を読むと、この方が食品業界志望で、
大学で食品の研究をしている、毎日頑張っている、ということはよくわかります。
ですが、この方がどういう気持ちで乳酸菌の研究をしているのか、
なぜ新たな食品の開発をしたいのか、毎日大変と言いながらも頑張っているのはなぜか、がわかりません。
そうした『気持ち』が見えてこないと、報告文を読んでいるような感覚になり
「すらすら読めるけれど印象が薄い」志望動機になってしまいます。
人事担当者を納得させる志望動機 3つのポイント
ではいよいよ、人事担当者を説得させる志望動機の書き方のポイントについてお伝えします。
この3つのポイントを押さえれば、人事担当者も納得の志望動機が書けるようになります。
なぜその企業を選んだかが明確であること
先ほどの<例1>の志望動機をもう一度読んでみてください。何かが抜けていませんか?
そうです、食品業界を志望していることは書いてありますが、
その企業を選んだ理由が、まったく書かれていません。
これでは、食品業界であればどこでもいい、という印象を与えかねません。
「数ある食品メーカーの中でも〇〇の理由で、貴社に一番興味を持ちました」
「〇〇の分野に強みのある貴社で△△がやりたいと考えています」と
『貴社』を選んだ理由を明確に伝えて初めて、その会社への志望動機になります。
応募者の考えや個性が伝わってきて、その人自身に興味が湧くこと
<例1>の志望動機を、書いている学生の視点で見てみましょう。
一見、食べることが好きで、食品の研究をしていて食品業界を目指している、
と話に一貫性があって、内容が良く伝わりそうに見えます。
しかし、ここに盲点があります。
<例1>のように、事象や状況だけを書いた志望動機は、
『食品の研究をしている同じ学科の学生』が同じように書けてしまうものなのです。
そこで必ず書かなければならないのが『あなた自身の考えや想い』です。
同じ学科で食品の研究をしていても、研究の何が楽しいのか。
研究に対する想いや苦労、乳酸菌をテーマにした理由はそれぞれ違うはずですよね。
そこに、『自分らしさ』や『あなた固有の考え』が詰まっています。
夏休みも毎日研究に励んでいた、などという皆と同じ状況は書く必要はありません。
その代わりに、自分にとっての研究の楽しさを存分にESで表現してください。
人事担当者はそのあなたの想いに惹きつけられ、
「この学生さんに会いたいな」、「会って話が聴きたい」と思うのです。
考えや主張と経験談が紐づき、納得感と論理性があること
<例1>の文章に、研究に対する想いが加われば、
これまでやってきた経験(食品の研究)と自分の考え(研究に対する想い)、
そして食品メーカーを選んだこと(主張)が紐づき、納得感のある志望動機が出来上がります。
では、次のような場合はどうでしょうか。
食品業界を目指した理由が、「食べることが好き」だけでは納得感が薄く、
また体育会で努力してきたことも結びついていません。
しかしこの『主張と経験を紐づける』ことを意識して経験談を選ぶと、
次のような納得感のある志望動機になります。
人事をうなずかせる志望動機の書き方 <例文付き>
ここまで、盛り込むべきポイントをご理解いただいたところで、いよいよ「書き方」です。
字数に合わせて構成を考え、あとはポイントを思い出しながら書いてみましょう。
ここでは基本となる400字で書きます。
おススメ基本の文章構成(400字の場合)
こちらは基本構成例です。
「この会社にぜひ行きたい」など個社への志望度が強い場合は、
1と2を合わせて250字程度で書くのもよいでしょう。また字数は目安ですので、
あまり気にせずに、2の貴社を選んだ理由のパートがボリュームゾーン、
ということを頭に入れておけば大丈夫です。
おススメ文章構成を使った志望動機の例(400字)
1.
私は小さいころから食べることが好きで、美味しいものを食べる小さな幸せを大切にしたいと思い、食品業界を志望しています。15年サッカーを続けており、高校時代からは身体つくりのための食事に気を遣い、カロリーや成分を考えるうちに、食に関する興味が強くなりました。(126字)
2.
貴社の「自然の恵みと多くの人々との出会いに感謝」して企業活動を行っている点は、私がサッカーを続ける際に常に思っている、「周囲の人やチームへの感謝」や「食べ物で身体を整える」思考と共通し、貴社でなら自然体で自分の力が発揮できるのではないかと感じました。(125字)
3.
私はスポーツで鍛えた精神力と体力に自信を持っております。また持ち前の社交性を活かし、営業職としてどんなお客様とも信頼関係を築き、自然の恵みの詰まった商品を、日本中、世界中に届けたいと考えております。(99字)
4.
これまで勝利を目指して努力を続けてきたことを、貴社では成果を目標に努力を重ねたいと考えております。(49字)
自分の経験や想いと志望する業界や企業との紐づけが、随所にあることにお気づきですか。
これが、自分らしい志望動機が書ける秘訣です。
社会と自分はどう繋がるかを考え表現すること。
それが人事担当者の心を惹きつけ、「会ってもっと話を聞きたい」→書類通過→面接につながるのです。
まとめ
いかがでしょうか。自分らしい志望動機を書くイメージが持てたでしょうか。
書いた志望動機がしっくりくる、自分にとっても納得感があることは、
ESが通過するために、そして内定を得るためにも大変重要です。
ぜひ自分らしい、愛着の湧く志望動機に仕上げましょう。
【執筆者紹介】
津田 典子(つだ のりこ)
キャリアコンサルタント、和光大学非常勤講師
ANA客室乗務員インストラクター、チーフパーサーとして11年従事した後、採用コンサルタントとして10社の新卒・中途採用業務に携わる。これまでに3大学にて4000件超の就職相談に関わり、現在は和光大学にてビジネスマナーとキャリア教育に力を注ぐ。